タバコってむずかしい

2020年の東京オリンピックに向けて、厚労省が飲食店やホテルなどのサービス業の施設を、原則禁煙とすることを検討していることが話題になっている。

どちらかいえば、喫煙者にとっては嘆かわしい、非喫煙者にとっては喜ばしいニュースといえよう。

 

私自身は喫煙者ではない。

一緒に住む家族では、父ひとりだけが喫煙者だ。

ヘビースモーカーというわけではないが、1日にひと箱ほど吸っているだろうか。そんな生活が20歳ごろから何十年も続いているようだ。

私が小学生くらいのときに一度禁煙をしていたような記憶があるが、いつの間にかまた吸いはじめていた。

 

父は家でタバコを吸うときは台所の換気扇の下かトイレかどちらかで吸っている。

一応こちらに煙が回らないようにしているようだがあまり効果はない。

換気扇を回していてもリビングのほうまで煙とにおいは来るし、トイレにもこもる。

 

物心ついたころからそんな環境ではあるから今さら受動喫煙だなんだと言う気にもならないが、正直私はあまり気持ちのよいものとは思っていない。

 

だからといって、喫煙者の友達もたくさんいるがその人たち個人を嫌だと思うこともまったくない。

タバコを吸うからその人が嫌いというわけではなく、私はただ誰かがタバコを吸っていて、その煙が流れてくるという事実が嫌なだけなのだ。

 

先日友達と食事に行った。

その友達は喫煙者で、よく学校の喫煙所で一服しているのを見かける。

ちょっと吸っていい?と聞かれ、いいよと言うと友達は赤マルを吸いはじめた。

 

真横で吸われても、その人自体にはまったく嫌悪感はない。

家でも毎日父が吸っているから慣れている。

それなのに、やはり体が嫌がっているのがわかる。

いつの間にか私は流れてくる煙を吸い込まないように自然と息を潜めていた。

 

友達に、おいしい?と聞いてみた。

おいしい。と友達は答えた。

煙がおいしいってどういうことなんだろう。

味がするのだろうか。においがおいしいのだろうか。

緑が豊かな丘に登って、空気がおいしいというのと同じようなことなのだろうか。

 

やはり吸っていない私にはわからないことだった。

私にとって副流煙はどれもただの煙だ。

 

タバコおいしい?の話から嗜好品の話になり、友達がこんなことを言っていた。

酒よりもタバコのほうがコスパ良い気がする。

聞いて一瞬意味がわからなかったが、友達が言うには、お酒は店で飲むと1杯300円とかそれ以上するし、何杯も飲むからけっこうかかる。それに対してタバコは1日1箱吸うにしても今はひと箱450円前後だから、こっちのが安いだろうということだった。

 

そんなコスパとか言うんだったらはじめから吸わなきゃいいのに…と言いそうになるのをグッと堪えた。

今はそういう話ではないのだ。

まぁ確かに言われてみればそうかもしれない。

タバコの値段がどんどん高くなっているとはいえ、そうやって考えてみると、そのときいたバルで何杯かお酒を飲むほうが高くつく。

 

喫煙者はあんなに高いお金を毎月はたいてなんでずっと吸い続けるのだろうかと思っていたが、経済面だけで考えると毎日数杯のお酒(店で)を飲んでいるほうがお金がかかるのかもしれない(私はお酒は3週間に一度くらいしか飲まない)。

 

だが、どうしても見過ごせないのは健康面だ。

この健康面においてお酒にくらべてタバコのほうがとやかく言われるのは、お酒で体を悪くしたのは自己責任といえるが、タバコは自分の意思とは別に受動喫煙をさせられることがあるからだろう。

新聞やネットニュースを見ていても、受動喫煙による肺がんのリスクが取り上げられた記事もよく目にする。

そういうものを見ると、やはり慣れてはいても家でタバコを吸われるのが嫌になってくるし、なにより本人が吸うのもやめてほしいなと思ってしまう。

 

でも、ようすを見ると父は安らいでいるように見えるし、友達も美味しそうに吸っているのでなかなかやめてとも言いづらいのだ。

だから、吸っているのを見つけたら毎回くどくど言うわけではないが、たまーに、ほんとにたまーに、大切な人にはタバコちょっと控えてみたら?と言うようにしている。

実は非喫煙者から喫煙者にタバコをやめろと言うのはすごく勇気がいることだったりする。

吸ってる者にしかわからないであろうタバコの良さを知らない身で、無条件にそれをやめろと言うのだから。

でも、煙たがられても、聞く耳を持ってもらえなくても、あなたの健康を思っていますよという気持ちが少しでも伝わればいいと思って私はそうしている。

結果、それが禁煙につながらなくてもそれはそれで仕方のないことだと思う。

 

私のまわりには、ヘビースモーカーから並みの喫煙者、すごくタバコに嫌悪感を持っている人まで様々な人がいる。

そして私は非喫煙者だ。

 

吸わない人は、健康に被害があるからという正論だけをふりかざしてむやみに喫煙者を迫害してはいけないし、

吸う人は、これは文化だ、吸わなきゃやってらんねぇよと煙が苦手な非喫煙者のいることを考えずに吸ってもいけない。

 

厚労省がどのように禁煙や分煙を進めていくのか動向が気になるところだが、私たちは自分の立場からの言い分だけではなく、相手のことも慮ってこれを議論していく必要があるのではないだろうか。